アルコール依存症、断酒から「減酒」へ新外来

al_2017-0427

患者の症状がまだ軽症であれば、この新外来は案外上手くいくような気がするけどな。

いまアルコール関連の薬ではシアナマイドやノックビンのような抗酒剤ではなく、断酒補助剤のレグテクトが第一選択薬になるケースが多いと、新聞記事か何かで読んだ気がする。

アカンプロサート(レグテクト)も一定数で飲酒欲求を抑えるその有効性が認められているしね。

わたしがアルコール専門病棟に入院していたときに、先に入院していた29歳の大工をしている人がいたんだけど、色々話しを聞いているとわたしよりも離脱症状や飲酒欲求は軽かったように見受けられた。

程無くしてその人も断酒カリキュラムをすべて終えて退院していったのだが、その2週間後である初めての定期診察で来院したときには既にスリップ(再飲酒)した後で、連続飲酒状態の手前まで症状が戻ってしまっていた。

入院中、彼は非常に真面目な態度で治療やカリキュラムと向き合っており、仕事が大工ということもあって病院近くの井の頭公園で入院で落ちた体力を取り戻すために、毎日ひとり黙々と5~10kmのランニングをこなして退院に備えていたのだから。

それ程までに自制心の塊だった彼ですら簡単にスリップしてしまうなんて。わたしは本当にアルコールという薬物の恐ろしさを感じずにはいられなかった…。

「診察が終わったら病棟の休憩室においでよ」と誘って、しばらくすると彼が休憩室に上がってきたのだが、明るいところで改めて彼の顔を見てギョッとしてしまった。目は虚ろに泳ぎ視点が定まること無く、そして生気を失った顔をしていた…。

彼は退院後の状況を語り始めると、徐々に感情が昂ってしまったのか嗚咽を漏らし始めた…。聞けば退院して数日は入院時と変わらない生活を送っていたのだが、仕事に復帰すると何故か飲酒欲求が頭を過るようになっていったそうだ。

そして軽い気持ちからコンビニで缶ビールを買ったそうだが、そのビールを一口飲んだだけで身体に刻まれた飲酒時の快楽を脳が完全に思い出してしまい、自分の気持ちとは裏腹に酒浸りな生活に舞い戻ってしまったらしい…。

仕事の方も現場復帰はしたものの、スリップが原因で復帰してから1週間で出勤することがままならなくなり、結局はひとり部屋に篭って酒を飲み続けていたという。

わたしは入院先の病棟や外来などでこのような人達をたくさん見てきたから、アルコール依存症に再びならないための方法、つまり断酒を継続することが如何に難しいことなのかは、多少身を以て知っているつもりだ。

だから自らの意志で飲酒量を減らしたり休肝日を設けることで症状が改善していく、すなわち中~重症者まで病気が進行しないよう軽症者の治療機会を増やす施策として、積極的に取り組み始めることはとても重要で意義あることだと思う。

世界的にはタバコに続いて酒も規制していく方針なのだが、日本は先進国の中で酒・タバコの規制に関する取り組みが一番遅れている。これは国家として非常に恥ずべきことと関係者は自覚すべきなのだ。

まずは右肩上がりで増え続けるアルコール依存症やその予備軍である酒害者を、治療の動線として相談窓口の設置や医療機関での受診機会を広げること。これは早急に国や自治体や医療機関が連携して積極的に取り組んだ方がいい。

重度の依存症患者となる前にまずは治療への敷居を低くして、アルコールによる酒害を広く警鐘していくための施策と活動を行うこと。これらは絶対に必要なんだよ。

記事:http://www.yomiuri.co.jp/science/20170425-OYT1T50058.html
出典:http://adndeportivo.com/

TAKEMOTO, Toshio
TAKEMOTO, Toshio
わたしはPsychopathでありAlcoholismと戦っています

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