「8時間労働」は適切な長さか

bu_2016-0801

いくら人間が頑張っても有機体である限り、活動可能時間には限界はある。

それは身体が老化するに従い限界範囲が拡大する、即ち製品の経年劣化と同様、非生産的な存在となる。

脳科学的には、仕事の効率を最も高めるためには「集中力」を高める方法が有効であると、脳科学学会においてひとつの指針が示されている。

脳の構造的に短時間でも集中力が持続するのは「25分」がリミットなのだそう。ここに5分の休憩時間を挟みまた25分間仕事に取り掛かる。

つまり25分仕事→5分休憩の計30分間をひとつのタスクとして、これを4セット繰り返す。

するとちょうど120分間費やしたことになるが、人間が1日のうちで集中力を最大限発揮し続けられるのは「1日/120分間」が限界であると考えられている。

この脳の活用方法をポモドーロ・テクニックと呼び、イタリアの脳科学学会で考案・発表されたメソッド(方法)のひとつである。

これ以上脳を酷使しても集中することが出来ず、周囲にある事象を情報として受け取ってしまうので仕事の効率が著しく下がってしまう。

この意識外で周囲の情報を脳が受け取ることを「雑念」と呼ぶ。

終戦から復興を遂げた高度経済成長期ならば、その労働時間の長さが日本人の勤勉さや美徳と讃えられていたこともあるが、21世紀に入ると日本は他の先進国の後塵を拝しているにもかかわらず、相変わらず労働時間だけが長い。

これは日本の産業構造に大きな歪みがあるからだ。高度経済成長期と21世紀の現代とでは日本の産業構造は大きく異なっている。

前者は「成長産業」と呼ばれ、第一次産業の農林漁業と第二次産業の製造業の割合が約60%を占めていたが、後者である2010年には実に75%超がサービス業の第三次産業が占めることとなった。こちらは「成熟産業」という。

先進国の経済が一定の規模を超えると、生産・製造業からサービス業へと就労人口が移行する。

マルクス資本論の理論において、商品の値段とは「商品の価値」で決まる。そして商品の価値は「商品にどれだけコストがかかっているか」で決まっていた。

しかし経済が成熟し生産性が著しく落ちてしまったことで、第三次産業に集中し過ぎてしまった企業間で激しい仕事の奪い合い、つまり過当競争が行われるようになる。

サービス業とはマンパワー、つまり「人」が資源であるため、労働者を低コストで使うことを前提とした、歯止めがかからない底なしの価格競争に陥ってしまう。

この受注競争のために企業は原価を下げる手段を講じるが、もっとも効果的なコスト削減は人件費を下げることである。

そのためサービス業では「最低賃金での非正規雇用」を余儀なくされるのだ。

政府が新しい人材活用の在り方として推奨しているワークシェアリングだが、実態から考察すればワークシェアリングが浸透すればするほど、労働者の効率的な仕事からかけ離れてしまう。

基本的にワークシェアリングが可能な仕事とは、高度な専門性のある仕事以外の、いわゆる軽作業を多人数でジョブシェアすること。

短時間労働でワークシェアリングが出来れば、雇用も分散するしある意味で理想的ではある。

しかしサービス業の非正規労働者の多くは、繁忙期・閑散期を問わない契約時間で拘束される仕事にどうしても集約されがちである。

つまりそのような非生産的な仕事では「作業効率」よりも「拘束時間」のほうがより重要な指標というわけ。

しかし「時給=最低賃金」しか貰えなければ、このままでは生活費にもならない。

だからダブルワーク・トリプルワークまでして、他の短時間労働の仕事を掛け持ちせざるを得なくなる。

だが1日に回る職場が多くなればなるほど、アイドルタイム(待機時間)が増えてしまうので、賃金にならない部分での拘束時間が非常に長いというデメリットもある。

「これがワークシェアリング」と政府関係者に言われてしまえばそれまでだが、そのような勤務をしている非正規労働者の精神衛生的にも、ワークシェアリングという働き方が良いと一概には言えない。

サービス業の賃金が低い理由を一言で述べれば「労働生産性の低さ」だろう。

サービスとはいわゆる無形資産なので正当な評価を得難い面がある。

このサービスという無形資産を数値で評価するなど取り組みは感じられるが、まだこれという決め手はない。

また逆に対外的に評価されるため、必要以上に過剰サービスしてしまうから生産性が上がらないという指摘もある。

そしてこのサービス産業の「数値化による管理」で、明らかにサービスの質を履き違えている企業も中には見受けられる。

例えば某大手寿司チェーン店では、最低賃金で雇用した非正規労働者を、厨房・バックヤードに設置した監視カメラの映像で、常時作業員の動きをチェックしている。

また某大手タクシー会社はタクシー全車にGPSを搭載し、常に走行位置を把握している。

例えば駅前停車場の客待ち以外で、ある地点において30分以上停車しそのまま動きがなければ帰社後、幹部から警告が与えられる。

また勤務中のドライブレコーダーを回収し逐一チェックされ、急発進・急停止でも幹部から呼び出しがあり、こちらも口頭注意が与えられるという。

逆にここまでやってしまうと労働者の人権侵害として、訴えられても何らおかしくないレベルだが、この管理方法を数値化したサービスとして掲げているブラック企業も実際にあるというから恐ろしい。

このような企業には「もし逆の立場になったら?」ということを冷静に考えてみてもらいたいが、労働者が気持ちよく働けるという就労環境作りの真逆の方向を見ていることに、果たして気が付いてもらえるのだろうか?

記事:http://www.huffingtonpost.jp/rootport/8hours-working_b_11191398.html
出典:http://jp.reuters.com/

TAKEMOTO, Toshio
TAKEMOTO, Toshio
わたしはPsychopathでありAlcoholismと戦っています

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