深刻な人手不足倒産 2017年度は初めて100件超す

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人手不足倒産ってのが、いよいよ洒落では済まなくなってきた。

ここで人手不足倒産とは、

従業員の離職や採用難等により、人手を確保できず、収益が悪化したことなどを要因とする倒産(法的整理、負債1000万円以上、個人事業主を含む)

と、調査元の帝国データバンクは定義している。

早い話が、後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰など、人的資源の確保に端を発する倒産モデルとイメージすればわかりやすいだろう。

以前から年末や繁忙期の人手不足については、運輸・外食・小売などを代表に数年前から耳に挟む機会も多くなってはいたが、慢性的な人手不足感は経営において、非常に大きなリスクであることを改めて実証したデータと言える。

しかし一方では「アベノミクスによって雇用機会は増え就業者数も増加しているではないか?」と疑問を呈する声もある。

一見すれば、雇用が改善すると就業者数が増えることで消費が刺激され経済は上向くはずなのだが、正直に言ってしまえば景気回復の「け」の字すら感じられない。

だがこの雇用の増加は、以下のように説明付けすることができる。

総務省の労働力調査を紐解いていくと、女性の労働人口の推移は2013年1月から比較して、2017年8月までに198万人も増加(※1)している。

これが女性の「社会進出=働き方改革」による労働環境の改善と捉える向きもあるが、その雇用増の内訳を見てしまうと表向きの印象はちょっと変わってしまうかもしれない。

実は増加した女性の労働人口のうちの約80%以上を65歳以上の高齢者が占めているのだ。

この物言いは大変失礼なのだが敢えて批判を恐れずに書けば、いままで高齢者というだけで箸にも棒にも掛からなかった高齢女性に雇用の場が与えられたに過ぎない。

つまり猫の手も借りたいという状況下で爪弾きにされていた高齢女性にようやくお鉢が回ってきただけなのだ。

しかしこのような雇用増も労働生産性が低いサービス業が中心であり、これらの労働は賃金水準が低いので手取り収入は増えない。結果的に消費も高まらない状況が続いている。

現状のまま何も改善がなされなければ、この先高齢者の労働力が増加しても産業構造の中心となるサービス業の労働生産性を引き上げることが出来ないだろうし、むしろいまの水準よりも低下してしまうだろう。

実際に人手不足に窮する中小零細企業の多くは、すでに経営余力が無いに等しい。

この先も変わらず製造業が伸び悩み雇用調整を続ければ、受け皿となるサービス業にかかる負担は更に増加する一方である。

だが前述した通りサービス業における労働生産性の改善は、今後も見通しが厳しいと推測できる。

ただでさえ人手不足のこの時代に、働き方改革という名をワークシェアリング政策を政府から喉元に突き付けられてしまっては、既存のマンパワーによる長時間労働のサービス残業という手段も使えない。

拘束時間を短くしなければならない社員の労働時間を効率良くフルに使おうとするならば、移動によるロスを極力削減して現地調達・現地採用を経営の基本方針にせざるを得ないだろう。

しかしそれだけの施策では、労働生産性の抜本的な見直しには不十分で、その改善効果はほとんど見られないだろうね。

日本経済は停滞期に入って久しいのに、企業数はまだ経済規模に応じた数に淘汰されきってはいない。

先に触れたが人手不足に直面する中小零細企業が生き残る道は、積極的なM&Aによって企業体力を補填しつつ組織の無駄を極限まで削ぎ落とし、スリム化を図っていくしか無いように思える。

実際現場に従事する人手は削減出来ないのだから、それ以外の部分で不要、若しくは非効率と思われる部分を率先して排除し、如何に合理化・効率化を促進して組織を再編できるか?

すべては経営者の手腕にかかっている。

ロボットやAIへの投資を進める企業もあるのだが、経営余力に乏しい中小零細企業の事業者がこのような部門に投資するのは、負担が極めて大きい上にリスクも高い。

現状でロボット化・AI化に置換えることが難しいサービス業の多くは、結局は人手に頼るしかない労働集約型産業の業種に絞られる。

つまり労働生産性を高めるための効率化は、直接的なマンパワー以外の部分で改善を図るしか手立てはないのだから。

ここでひとつのケーススタディーとして、労働生産性を改善することに成功した大手コンビニエンスチェーンの取り組みを実例にあげてみよう。

コンビニエンスチェーン最大手のセブンイレブン・ジャパンは、2017年春より導入した新レイアウト店舗の売り上げ効果が、日販で平均1万5千円増加(※2)したと発表した。

また経営統合でセブンイレブンを追うファミリーマートでは、陳列棚など省力化設備を導入(※3)することで働きやすい環境を整え、慢性的な人手不足感の解消と離職者数の低下をはかる。

そして不祥事や異物混入など顧客クレームが相次ぎ、長らく業績が低迷していた日本マクドナルドだが、2017年度には奇跡的なV字回復(※4)を見せ、経営を立て直したことは記憶に新しい。

しかしこれに奢ることなく、マクドナルドはスマートフォンで商品を事前注文し決済もできるシステムを全2900店に導入(※5)することを発表、更なる改革の矢を放つ。

いずれも日本を牽引する大手企業であり、人手不足のサービス業を代表する職種ではあるものの、ここにひとつの共通項を見出すことができる。

レイアウト変更や省力陳列棚・スマートフォンを使った注文システムの導入など、ハードウェアを拡充することでソフトウェアであるスタッフの負担を軽減していく。

軽減されたソフトウェア面の負担はより一層のサービス向上へと、顧客に付加価値を提供することで業績を上げているケースが非常に酷似している。

ここでいう付加価値とは、企業側が顧客側へと一方的に押し付けた価値観ではない。ということをくれぐれも誤解なきように。

記事:https://www.zaikei.co.jp/article/20180410/436663.html
出典:https://jp.reuters.com/
引用:雇用は増えたが…生産性・賃金低いサービス業に集中(※1)
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO29130260X00C18A4EA3000?
引用:セブン-イレブン/新レイアウト導入で日商1.5万円増、今期1700店に導入(※2)
https://www.ryutsuu.biz/store/k040943.html
引用:ファミマ、全店を「稼げる店」に 省力化600億円(※3)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29214000Q8A410C1TJ1000/
引用:やっぱマクドやで! 日本マクドナルドの業績大回復、貢献した「3本の矢」(※4)
https://www.sankeibiz.jp/business/news/171123/bsd1711231605001-n1.htm
引用:急回復したマクドの次の一手は「顧客時間」(※5)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/031300236/
参考:統計局ホームページ/労働力調査
http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html
参考:男女の就業の現状と変化 | 内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h26/zentai/html/honpen/b1_s00_02.html

TAKEMOTO, Toshio
TAKEMOTO, Toshio
わたしはPsychopathでありAlcoholismと戦っています

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